社会人になって独立してから長らく賃貸マンションに住んでいました。
結婚し、子供が2人生まれてからもしばらくは賃貸で暮らしていました。
借り上げ社宅と言って、住みたい部屋を見つけたら、会社が契約をしてくれて、自分はそこに住んで、自己負担として家賃の2割くらいを払えば良かったからです。
不動産を買うよりも賃貸に住んでいた方が経済的でした。
転職したり、事情が考慮されれば、よりよい環境に引っ越しをすることもできました。
そんな恵まれた環境にいましたが、結局、我が家は一戸建てを買うことになりました。
その最大の理由は、子供が大きくなってきたからです。
自分の経験からしても、子供たちが中学生になるころには自分の部屋が欲しくなるだろうと予想しました。
家族4人がそれぞれ自分の部屋を持つとなると4LDK以上の家が必要になります。
都内でそれだけの住まいを探すとなると結構大変です。
賃貸物件の情報を見るのは嫌いではなかったので、時間がある時にはちょくちょく、インターネットを使って物件を探していました。
でも、4LDK以上ある物件はそうそうありません。
部屋数があればそれでよいというわけでもありませんでした。
我が家は、住み替え運が良くて、新築の部屋に住むことが多かったのです。
引っ越し回数は多いので、もちろん、新築以外のマンションに住んだこともあります。
築年数がたっているマンションは、間取りや立地条件が良かったとしても、やはり水回りに古さが出るのです。
お風呂、トイレ、台所などです。
あるマンションの床にはオレンジ色のカビが付いていました。
とても気になったので、一生懸命こすって掃除をしたのですが、全く綺麗になりませんでした。
トイレの換気扇の音も大きく、子供が小さい頃だったのでそのモーター音を怖がって、管理会社に連絡をして修理をしてもらったこともありました。
4LDK以上の賃貸となると、築年数の古い物件しか見つからなかったのです。
いずれ家は買おうと思っていたので、賃貸は諦めて、一戸建てかマンションの購入を検討することにしました。
妻とも話をして、お互い、いずれは賃貸を卒業して戸建てかマンションを買おう、ということになりました。
ただし、大きな買い物です。
不動産売買に関する情報を集めて、本も読んで勉強し、良いと思う物件があってもすぐには飛びつかず、沢山の物件をみて不動産を見る目を養ってから買おう、という方針になりました。
ある日の週末に予定外に時間が空いたので、不動産の見学行こうか?ということになりました。
地元の駅近くに出来た新築マンションのモデルルームの広告を見たのです。
モデルルームでも新しい部屋を見ればテンションは一気にあがります。
普段淡々としている妻も表情が輝いています。
もしかしたら、この部屋が自分たちのうちになるかもしれない、その可能性は、決して低くはない、という思いが気持ちを高ぶらせました。
地元の駅周辺は以前から再開発のうわさがありました。
でも、噂の段階であり、正確な情報は知りえませんでした。
しかし、さすが不動産関係の方たちです。
そのマンションの周辺事情について、非常に詳しい情報を持っていました。
結局家を買うまでに何人もの不動産関連会社の営業マンの方とお話をさせていただきました。
中には失礼だなあと思う人もいましたが、たいていは、とても礼儀正しくて、お話も上手で、面談しているだけでも有意義な時間に感じる経験をしました。
失礼だなあ、と思った人、というのは、こちらの懐具合を低く見積もっていることが見え見えだった人のことです。
僕は、高利益体質の業界で売れている営業マンだったので一般のサラリーマンよりは経済的に恵まれていました。
全国ドサ周りもして、それなりに苦労をしてきたのですが、見た目が実年齢よりも若く見えるのです。
男が若く見られることは必ずしも良いことではない、と尊敬する上司から言われたことがあります。
確かに、軽く扱われることがあるので不愉快な思いをするのです。
ある日、見学した一戸建てで対応してくれた営業マンは僕よりもかなり年上のベテランの方でしたが、「今日は、お勉強に来られたのですね」と僕に言いました。
「この家、お前の給料じゃ買えないだろう。せいぜい見学させてやるから夢でもみなさい」
と言われているような印象を受けたのです。
被害妄想かもしれませんが、その人の対応の仕方でなんとなく思いは伝わってきます。
もちろん、そんなところでは買いませんでした。
元々は、沢山物件をみて目を養ってから買おう、と妻とは決めていたのですが、一度、不動産巡りを始めてしまってからは、1か月くらいで購入を決めました。
家族全員が気に入った物件が見つかったからです。
とは言え、よりより物件が今後も探し続ければ出てくる可能性もあります。
なぜ、物件探しを継続せず、僕らは購入を決断したのか、その理由は2つです。
まず、第1の理由は、ロケーションです。
金額や間取り的に、気に入った物件と同じかそれ以上の物件が今後出てくる可能性はもちろんありましたが、僕らが気に入ったその場所は、チャンスを逃してしまえば、手に入れることが出来なくなります。
日当たり、騒音、隣接する建物、学校、駅、実家からの距離、それらの条件がとても良かったのです。
第2の理由は時間です。
いくら見学をしても、そこで決断しなければ、見学をした時間が無駄になる、と考えました。
もちろん、住宅に関する情報が蓄積してより良い選択は出来るようになるとは思います。
でも、ある程度知識が溜まれば、知識の積み上がりは頭打ちになります。
週末の貴重な時間を、不動産見学だけで何週間、何か月も使い続けることが、効果的だとは思えなくなったのです。
気に入った物件がなければ探し続けたと思いますが、家族みんなが気に入った物件が見つかったのです。
もう、そこで決断しよう、と妻と合意しました。
家探しを始めて短期間で決断したので周囲からは驚かれましたが、結局、あの決断は間違えていませんでした。
家を買ってから4年がたちますが、家族みんながこの家が好きで、買った良かったと今でも思えているからです。